▼ 日記
失踪したトナカイ編7 と〜たす   3/11 1:12 [556]
200万G……の装備を破損させた? 俺が?
アイテム欄をスクロールしても耐久値を全損させて破損状態になっている装備は見当たらない。
うーむ、心当たりないな。

「どういうこと?」

「うごっ」

ポムさんが言うと同時に、アームロックから自由を取り戻したレガンが床に身体を打ち付けた。

「うわ……HP減るくらい腕に力込めてたのかよ……」

レガンは自身のHPバーに目を向けてながらつぶやいた。
首絞めも立派なダメージ判定だぞ。

「……まあ座れ」

タクオが新しく来たポムさんとレガンに着席を促した。

その後、タクオが俺たちに話したイベP不足とCPイベマを早めに攻略するという解決方法の内容を二人に伝えたところ、ポムさんは肯定したが、レガンはなぜか目を閉じて動かない。

「ポムさんは何でレガンを連れて来たんだ?」

「ちょうどいい人がいたら連れて来てって」

「空いたもう一人の枠で?」

ポムさんはエリクサーソーダを一口飲み、首を縦に振った。
と〜たす   3/11 1:13 [781]
ログインする前にタクオから数人のギルドメンバーの名前を伝えられ、その内一人を街で見つけたら連れて来い、と言われてたそうだ。
多分、ギルドの上位層から戦力を引っ張ってくるつもりだったのだろう。
そして連れて来られたレガンはというと。

「…………」

背もたれに背中を預け、目を閉じていた。
しかも腕を組んで、まるで全てを悟ったかのように動かない。
もしかして寝てるんじゃないだろうな。
と〜たす   3/11 1:13 [36]
「おーいレガン」

「……」

声をかけても微動だにしない。
へんじがない、ただのしかばねのようだ。

「仕方ないな。ベニ、やれ」

「はいはいー」

ベニがレガンの腕をとり、ごく自然な動きでレガンの腕をキメに行った。

「んっ!? いっ、いてててて! ベニショおまっ!」

レガンが暴れられないような体制にされた上で肘関節が逆方向に曲げられようとしている。
と〜たす   3/11 1:20 [83]
そういえば、肘関節だけが折れた時のダメージが固定ダメージなのか、割合ダメージなのかという検証はまだしてないから、これはレガンを実験台に検証するチャンスなんじゃないか?

「よしベニ、いい機会だから折れ!」

「お前は何言ってんだ!?」

「ダメージを確認しようと思って」

「検証か!? 未検証だったやつを今俺にするのか!?」
と〜たす   3/11 1:21 [465]
レガンが叫ぶと力ずくでベニの拘束を振りほどいてしまった。
残念なことに、物理職のレガンと魔法職のベニじゃあ力に大きな差がありすぎる。仕方ないことだ。
ちなみに俺がブレイブに折られた時に減った量は最大HPの一割くらいだった気がする。

「で、行くんだろ?」

「……?」

何もわかってない顔してやがる。

「イベP足りないから今からCPイベマのマップデータ取りながら攻略するってこと」
と〜たす   3/11 1:26 [32]
「今から盗賊団!? 断る!」

「な……」

絶句した。
まさか、サーバー最強ギルドのトッププレイヤーが四人も集まっているという状況でそれを退くとは思いもしなかった。
しかもゲーマーなら誰もが憧れる、新マップの初クリアパーティの一人になれるかもしれないという付加価値がありながら。

「どうしても無理なの?」
と〜たす   3/11 1:27 [793]
「徹夜なんだよ。昨日の夜に偶々見つけた通常イベマの隠しフロアを夜通し周ってたからさあ」

ポムさんの問いにレガンが答える。

「掲示板に貼ったヤツの時間だって、徹夜して午前中に寝ることを見越して夜の九時に予定したのに、急に行くことになっても厳しいわ」

そう言ってまた腕を組み、目を瞑った。

「レガンがダメとなると……ポム、他の奴はどうなんだ?」
と〜たす   3/11 1:27 [440]
「秋風とバゼルは夜だけでしょ。ナスとリオにはリアルの方でメール送ったんだけど、今の所通知も何もない」

「私の師匠呼んじゃダメかな?」

「今回の攻略はギルメンだけって言ってたでしょ」

「じゃあ今行けるのは変わらず四人だけか」

タクオとポムさんの話だと残りのメンバーも来れないようだ。
あ、そういえばレガンってログアウトしたはずなのになんでポムさんに連れて来られたんだ?
と〜たす   3/11 1:28 [901]
「レガン」

「……なんだよ」

「お前ログアウトしたのになんでここにいるんだ?」

「別になんだっていいだろ」

「ポムさん。レガンを捕まえた所ってどこ?」

「あっおま──」

「すぐ近くの通路で。いっぱい人いる中でカメラ持ちながら残念そうにしてる所を見つけたの」

「ほー」
と〜たす   3/11 1:28 [510]
なるほどねえ。だいたい予想がついた。
コイツは俺を嵌めて逃げた挙句、「高レベル同士の貴重な野良決闘シーン!」とかタイトルをつけて画像を売る手筈だったんだろう。
実際に高レベル同士の野良決闘はそうそう起こるものではなく、それを撮るための消費アイテムであるカメラを常備する物好きはレガンくらいだ。
つまりコイツは自分の知り合いを利用して金を稼ぐつもりだったのだ。
と〜たす   3/11 1:29 [95]
これはCPイベマ攻略に同行して償ってもらわないとなあ?

「いやお前だって隠しドロのやきいも破損させたろ!」

……あ、思い出した。
ブレイブと決闘してる時に調子に乗って試着したままのやきいもを、ブレイブのハルバードに突き刺したんだ。
だがあれは時効だ。

「そうだな。じゃあお前の売り物を破損させたという俺の非は、俺を嵌めて金を稼ごうとしたという非でチャラにしてやろう」
と〜たす   3/11 1:35 [223]
「……わかったよ」

予想通りか。そして俺にはまだ残りのカードがある。
あとはこのカードを切れば、嫌がるコイツを攻略に連れて行ける。

「そういえばお前、俺とベニのツーショットを『表現の自由』に売ったよな。すると俺はこれからそいつらに付きまとわれるようになって動き辛くなるんだけどわかるよな? 窓の外にいるアイツみたいな奴から」

指をさした先にいるプレイヤーがサッと物陰に隠れた。
と〜たす   3/11 1:35 [191]
なんでも『表現の自由』には読唇術を身に付けているプレイヤーがいるらしく、例え窓を隔てていても口の動きを見られている限り会話は筒抜けだと言われている。
これだから情報で稼ぐギルドは油断ならない。

「いやそれは無防備に撮られるお前が悪い」

「ここにきて開き直るか!?」

なんて奴だ……知り合いを売ることに対して全く罪悪感を覚えない最低なヤローだ。
と〜たす   3/11 1:36 [468]
「どちらにせよ、徹夜明けでコンディションが悪い奴を攻略に連れて行くことはできない。今回は四人で攻略にあたる」

見かねたタクオがまとめた。

「そして俺が受け取ったのはマップデータだけだが、ほかに敵情報があれば共有してほしい」

「わかった、ギルチャに載せとく」
と〜たす   3/11 1:36 [648]
そう言ってレガンがしばらく空中で指を動かした後、俺の視界の端にポーンとチャットの通知音を鳴らしてメールアイコンが出現した。

『白昼の流星 Guild chat
From:Legun
【ImageTitle.盗賊団の1〜4階マップデータと敵情報とか】』
と〜たす   3/11 1:37 [899]
ギルドチャットに送られた画像を開くと、いくつかの書き殴られた地形と敵情報を確認できた。
1〜3階は弓兵単独、4回は剣兵がペアで徘徊。全て盗賊団メンバーによりイベP効率は高い。突は無効、吸収、反射しないことを確認、などと汚い字で細かく書かれている。
弓兵が50Pで剣兵が60Pか……隠し森の『下っ端盗賊』が一体5Pであることを考えればCPイベマひとつで大漁だ。
と〜たす   3/11 1:37 [820]
ちなみにイベPを得られる敵は盗賊団メンバーのみである。通常イベマの出現モンスターはイベPの対象である『下っ端盗賊』や『辻斬り盗賊』の他に熊や鹿型のモンスターも出現する。

「じゃあ俺はこれで寝るからな」

レガンがログアウトし、水色の粒子を放って消えた。
と〜たす   3/11 1:37 [346]
くそ……まさかあいつがあんなに悪人だったとは。切り札が無駄になってしまった。

「よし。では十分後にロビーに集合しろ」

なんとも言えない敗北感を味わった後、アイテムを整理するため各々のマイホームへと向かった。
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