▼ 日記
失踪したトナカイ編5 と〜たす   2/10 3:47 [656]
俺は互いのHPバーを見た。
ブレイブの残りHPは八割、対して俺のHPは半分を切った。本来であれば回復技を使うところだが、決闘では回復技は使えないルールだ。
だが厄介な大盾を破壊し、堅い守りを失ったブレイブにマトモな攻撃が当たるようになった。

しかし、左手は素手、右手に短剣を逆手に持った構え……軍人が身に付けるようなナイフ術とも言うべき構えを取るブレイブにとって、大盾の破壊はあまり効果的ではなかったようだ。

「……十時か、そろそろ時間だな」

「なに?」

ブレイブの兜をつけた頭がわずかに動いた。
その呟きを聞いたその時、ポーンと音を立てて目の前にウィンドウが開いた。

『白昼の流星 Guild chat
From:Nassu
なんか軍人みたいな人達に決闘仕掛けられたんだけど受けていいんかな?』
と〜たす   2/10 3:48 [658]
ギルドチャットの通知が表示された。
それはその後も続く。

『白昼の流星 Guild chat
From:☆AzU☆
わかる! 兵隊さんみたいなやつでしょ』

『白昼の流星 Guild chat
From:Picrin Acid
そマ? こっちは三人来た』
と〜たす   2/10 3:48 [603]
『白昼の流星 Guild chat
From:Suzuki
俺んとこも三人来た
勝ったら武器もらうとかほざいてキモすぎなwww
こちとら白昼の流星サマやぞwwwww』

何だ、なにが起こってる?
ベニの方を見てみると、中空に向かって腕を動かしている。ベニも俺と同じギルドなので、俺が見たチャットと同じものを見ているのだ。
てかアレ、文を打ってる手の動きだな。何してんだ。
と〜たす   2/10 3:49 [728]
「気付いたか。現在街にいる『白昼の流星』四人に同時襲撃を仕掛けたところだ」

『白昼の流星 Guild chat
From:Suzuki
南エリアマジで治安悪くて草』

『白昼の流星 Guild chat
From:Nassu
鈴木そマ? 俺今は北西だけど』

「これは……今のお前みたいに武器を奪って回ってる感じか?」

「そうだ」

「三人来たとか言ってるけど」

「……フン」
と〜たす   2/10 3:49 [90]
まあ、ウチのギルドメンバーなら一対三でも問題ないだろうけどね。

「一つ聞きたいんだけどさ、これ誰の命令?」

「教えてやるがその前に、決着をつける」

ブレイブが短剣を構えて地面を蹴った。
俺の鉄の剣とブレイブの短剣がぶつかり合う────その瞬間だった。
と〜たす   2/10 3:50 [416]
「『スタンフラッシュ』!」

ブレイブが左手を前にかざし、烈光を伴った衝撃を放った。
な……ここに来て魔法技!?

「くっ……」

体が衝撃でよろめいたが、なんとか踏みとどまる。
光属性単体技『スタンフラッシュ』は、直視した相手を確率でめまい状態にする。
もしプレイヤーがめまいを受ければ、しばらく目を開けることができなくなる状態異常技だ。
と〜たす   2/10 3:50 [851]
しかし幸運にもそれを直視した俺はめまい状態になることはなかった。が、一瞬でも目を閉じたことで俺は敵を見失い────
気づけば懐に潜り込まれ、ブレイブに馬乗りにされていた。しかも右腕は膝で押さえ込まれており、剣で迎撃することができない。
これはまずいな……軍人プレイヤーが目眩しに魔法技を使うとは思ってなかった。ゲームシステムを現実の戦闘術とうまく融合させている。
と〜たす   2/10 3:51 [348]
『白昼の流星 Guild chat
From:Beni
こっちもにっくが暴漢に犯されそう』

ポーンと、視界の端にギルドチャットの通知が現れたが、今はそれどころじゃない。
ブレイブが俺の眉間を狙って短剣を振り下ろそうと振りかぶってるのだから。

「ぇッ!」

いくら俺のレベルが高いといっても、眉間へのダメージは無視できない。一撃で半分しかないHPが二割まで消し飛ぶだろう。
と〜たす   2/10 3:52 [148]
だから自由な左手でブレイブの手を押さえた。

剣先は紙一重で止まった。アバターの力は俺の方が上だ。つまりブレイブの短剣を押し返すことができる。

だが今度は、ブレイブにその左手を握られ、腕に足を絡めて逆関節方向に伸ばした。
これは戦闘術に明るくない俺でもわかる。腕ひしぎ十字固だ。しかも動き辛そうな鎧を着たままでだ。

まずい、一瞬の出来事すぎて反応が遅れ……
と〜たす   2/10 3:52 [316]
バキン、と木の枝が折れたような乾いた音が響いた。それにより左肘の痛みを伝える信号が絶えず脳に伝わって来る。
そして折れた腕を四肢で固定したまま、ブレイブは執拗に短剣でグサグサと突き刺した。

「いッ……てえんだよ!」

俺も体勢が悪いままブレイブを狙い剣を振るうが、寸でのところで躱された。
同時に技を解かれたため、立ち上がって再三距離をとる。
と〜たす   2/10 3:53 [888]
半分あったHPは三割を切り、左腕は全く動かずず、だらんと力なく垂れ下がっている。

「お前が俺を舐めなければ負けることはなかっただろうな」

ブレイブが得意げに言った。
しかし俺も余裕を崩さない。

「へえ、戦闘術ってこんな狡い技ばっかなのかな? 俺って結構狡い方だから、俺が使えばお前より強くなりそうだなあ」
と〜たす   2/10 3:53 [528]
「たかが凡人が……」

「生憎俺は廃人なんでね、そこら辺の一般人と一緒にしてたら死ぬぞ?」

「そこまでだ」

「……あっ、やっべ」

挑発しながら互いの動きに集中していると、野次馬の中から見知った男プレイヤーが側まで歩いてきた。

「『白昼の流星』サブギルドマスターともあろう男が、何をこんな無様を晒している」
と〜たす   2/10 3:54 [54]
槍を使う銀髪の三白眼。
それはサーバー最強のプレイヤーであると同時に『白昼の流星』ギルドマスター、タクオの最大の特徴だった。

「いやあこれは、あれだ、久々の大物っていうか」

「まあいい。こんなことだろうとは思っていた。後で盗賊団の情報共有をするから、紅ショウガを連れて『スムーズドリンク』に来い」
と〜たす   2/10 3:54 [280]
「貴様がタクオか」

タクオの乱入にブレイブが反応した。

「何だ」

「ちょうどいい。今日だけで三つも神話武器が手に入るとはな」

「それは無理な話だな」

「心配するな。お前も後からコイツのように……」
と〜たす   2/10 3:55 [408]
ブレイブが話している途中、俺はタクオの横にもう一人の男が立っていることに気づいた。

「うわっ! ビックリした……」

思わず声を上げてしまう。
小柄な体系に、真っ黒なロープに目元が隠れるほど目深にフードを被っており、見えるのは口元だけだ。
いつのまにここへ……足音は全く聞こえなかったぞ。

「おや、ごめんね。驚かすつもりはなかったんだよ」
と〜たす   2/10 3:56 [993]
「か、頭」

カシラぁ!? こんな、ちっこいプレイヤーが、巨体を持つブレイブのボスだってのか?

「ブレイブ、アナタはにっくさんには勝てません。決闘は中断しなさい」

小柄な黒ローブがブレイブに告げた。

「……わかりました」

『Braveが中断を申し出ました。了承しますか?』
と〜たす   2/10 3:56 [270]
急な出来事に脳が付いて行けず、ほぼ無意識のうちに『はい』を選択した。

『決闘は中断されました。賭けられたアイテムは変換されます』

「じゃあにっく、待ってるぞ」

タクオが離れ、野次馬に紛れて消えた。

「では私も失礼しますね」

「あ、ちょっと待ってください!」
と〜たす   2/10 3:56 [777]
俺は黒ローブを呼び止めていた。

「何でしょう?」

「えと、アンタは俺らから決闘をして武器を奪おうとした奴らのボスなんだよな。それがなんでタクオと一緒にいたんだ?」

「交渉、ただそれだけですよ。その内容は、またいずれ」

それだけ残し、黒ローブは街の奥へと歩いて行った。
▼コメントを投稿する
※ご本人や日記と関係のない書き込みはお止め下さい。
他のプレイヤーの誹謗中傷、さらす行為などはお止め下さい。
マナー、ルールを守って、楽しく使ってください。



  



チビクエスト  このページへのリンクURL